精一杯

「日本人のへそ」

まだ正月気分のまま

通い始めた稽古場も

本日で最後でした。

いよいよ劇場入りです。

 

こまつ座 編著

浅草フランス座の時間」に

こんな文がある。

 

あとがきにかえて

春の宵の夢のごとし

 

「じめじめとした小雨の降る

 蒸し暑い土曜日の

 夜の部

 濡れた傘

 へばりつくレインコート

 劇場はむうんとした熱気で

 爪先き立った観客で満員

 何をやっても

 何を云っても

 うねって押し寄せる爆笑の波

 さあ・・・・何でもやれ 

 どんな事でもしろ

 今夜お前のする事だったら全部OKだ

 そんな熱気が舞台裏にも

 反応する。

 舞台両袖の奥に出番のない踊り子

 女優がびっしり普段覗きもしない気むずかしい大道具の頭梁も大口を

 あけて笑う

 金歯がキラッと

 光る

 只々人に観られているという

 えもいえぬ

 快感

 幼ない子供のようなうれしいうずきいつ迄も

 この夜の時が無限に続くような自惚れのうま酒に酔いしれる一瞬

 あれが青春だったのか

 舞台化粧をした一匹の雄の精一杯

 さかりのついた春の宵の夢だったのだろうか・・・・・。」

 

 文/ 渥美 清

 

あらゆる力を借りて

芝居ははじまります。